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にっきにっき

映画の感想ばかり書いているスーパーミラクルブログです。あなたのスターをお待ちしております

にっき077 - 時計屋地獄

愛用している腕時計の電池が切れてしまったので、この冬は付けずに過ごしました。バンドが革ではなくシルバーなメタリックなやつなので冬場につけると冷たくて寒い・・・という理由もあったのですが、第一はやはり電池の交換が宇宙一めんどくせえってことがありました。とは言いつつもそろそろ電池の交換をしとかないと手首がさみしいので、自宅の近くの時計屋へ持っていくことに。その店は看板や店名のロゴなどが昭和のまま時間が止まってしまったような印象でした。時計屋なのに。自宅から駅に行くときに前を通るので存在は知っていたのですが、入店は初めて。ドアを恐る恐る開けると、体の上に卵が乗っているかのような輪郭をしたきれいなおっさんが恵比須顔で近づいてきました。

時計の電池を交換して欲しい旨を告げ、時計を渡すとじっとりとわたしの顔をなめ回すように見つめてきました。こええ・・・と思っていると、おっさんが「あんたは顔にシワが無いね・・・」と一言。どういうこと?と聞き返すと「実は美顔ローラー器を独自に開発したんで誰かに試してもらいたかった」とのこと。美顔ローラーってあの目尻とかにコロコロあてることでシワを伸ばすやつか~とか思ってたら、「時計見てる間使ってみたらどうかね、よ~く見ると目の下に少しだけシワがあるみたいだから使ってみるといい」と、おっさん。いや・・・そういうのいいから早く時計直せよ・・・とか思っていながらもクチは「じゃあ頼む」と言ってしまったので、おっさん嬉しそうに奥から件のローラーを出してきました。そのローラーは、持つところの先に細い鉄の棒がY字に伸びた後、内側に少し曲がっていました。そのY字の棒に挟み込まれるように水晶がはまっているというデザインでした。わたしは回る箇所が円柱状になってるやつを想像していたのですが、これはどうやら水平に持って転がすようです。何でもこの水晶の力でめちゃくちゃシワが伸びるらしいのですが、いくらコロコロやろうがまあ効果がすぐ出るわけでも無く、「早く直せや・・・」と思いながらコロコロしていました。おっさんはこのローラーを独自に開発したときの苦労話や、クチコミで広がっていることや、実際に使っている50代の女性が驚くほど肌がつるつるであることを自慢げに語り出したので、めんどくせえなこいつって思いました。ちなみにこのローラー、30,000円らしいです。自分が買って友達に売りつける時は45,000円で売っていいとのマル得情報を入手したのですが、友達が減りそうなので買いませんでした。

飽きたので近くのテーブルに置いてしばらく待っていると、おっさん「電池の時計を直している最中こんなこと言うのは申し訳ないんですが、電池時計はね、体に悪影響しか無いんですよ」と時計屋にあるまじき発言。そんなこと言うんだ・・・と思っていると、おっさんは続けて「電池時計のパルスが体にすごく影響が悪くなって死んでしまうんだよ。携帯電話とかも最悪だね」。聞き流していたので正確な情報は調べられないのですが、早い話「腕時計はゼンマイ式のアナログに限る」ってことが言いたいらしいです。おっさんは熱弁中、手はずっと止まっていました。しゃべってるのはいいけど手は動かしてくれ・・・と思っていると、ようやく電池の交換は終わりました。で、これで逃げられると思ったのですが、「少し時間あるかい?いかに電池の時計が体に影響を及ぼすかテストしてあげよう」とのこと。海で溺れて何とか岸に上がったと思ったら巨大なワシに捕らえられたぐらいの逃げられなさでもって、まず人差し指と親指で輪っかを作らされました。おっさん、「今からこの輪に指を入れて引っ張ってみます。今は時計をしていないので、あなたの作った輪ははずれません」とグイグイと引っ張ります。確かにはずれません。ここで反対の腕に時計をはめて再びテストすると、何と輪がはずれてしまいました!どう考えても二回目の時本気でやってた。力の加減全然違ったし・・・。で、もう一回時計をはずして三度テストすると、はずれません・・・。「ほらね、電池時計は怖いんだ」わたしはあなたが怖い。

もういいでしょうと思っていると、おっさんは余程人としゃべりたかったのか、「もう一分、時間ください。今体で痛いところありませんか?」と問いかけてきます。だんだん面白くなってきたので、YESと答えると店の置くから深い青色をした石を持ってきました。「体の痛いところに置くだけで、たちどころに痛みは消えます。どこか痛いところは?」とのこと。特に痛いところは無かったのですが、とりあえず肩と答えると、わたしに石を持たせて1分待つことに。無言。時計をじっと見つめて時間を測っているおっさん。石を押しあてながらどこに視線を定めていいか分からず節目がちになるわたし。永遠にも近い一分間が経過して「どうですか?痛くなくなったでしょう」と、おっさん。いや・・・強いて言えばのレベルだったので別段変わりは無いような・・・と言うとおっさんはやや悲しそうな顔をして「これはラピスラズリと言って、かなり高価な石なんだ」と石の正体を教えてくれました。ラピスラズリ・・・スーファミの「学校であった怖い話」に出てきたので名前は知っていましたが、まさかこんな色だったとは。「アルカイダのあるアフガニスタンに鉱脈があるんだが、現在の情勢から入手は難しいんだ」と意気揚々に語り出したので、もういい!もういいわ!と思って話を切り上げました。全体的におっさん胡散臭いよ!と思いながらも時計の修理は完璧だったのでトントンでした。

で、修理費は1,200円。あいにく10,000円しか無かったのでそれを出すと、「今千円札を切らしていて・・・」と眉毛がハの字に。千円札切らすってことあんの?って思ったのですが、わたしも今のところ持ち合わせが大きいやつしか無かったので、どうしようかと思っていると「また今度でOK」と聖人降臨。性善説を信じているのかこのおっさん・・・と思いつつ、分かりました、じゃあ今度通りかかった時に渡しますと言ってその場を去りました。昔のわたしなら100%この店には行くことは無かったのですが、前述の通り自宅と駅の間ということもあり、あとあとめんどくさくなりそうなのでちゃんとお金を渡しに行きました。翌日1,200円を持って時計屋へ行くと、おっさんが外で鼻歌まじりに水をまいていました。で、こんにちはー、と一声かけてお金を渡すと、わたしの顔を覚えていたようで「ああ、わざわざありがとうございます」と満点の笑顔。よし、これでこのおっさんとの関わりはもう無い・・・と思ったら「ドリンクでも飲んでいきますか?」とわたしを中へいざなおうとしてきます。わたしは誘われるままにその時計屋にフラフラと入りこみ、そのまま二度と帰ることはなかった・・・ということは無かったんですが、あのおっさん生きてるの楽しそう。