映画感想 - ザ・モンスター(2016)
ザ・モンスター
★★★★★
【あらすじ】
キャシーは、一人娘のリジーと二人暮らし。アル中でシングルマザーのキャシーの生活はだらしなく、身の回りの世話や家事は全てリジーが行なっていた。言い争いをしながらもお互い支え合って日々暮らしていたが、リジーの将来のことを考えて別れた父親の元に預けることを決心する。出発直前まで眠り込んでいたキャシーだったが、何とか叩き起こして車を走らせる。旅路は夜中まで続いた。暗闇が広がる大雨の森の中を車でかっ飛ばしていると、突然目の前に現れたオオカミを避けきれず衝突し、その衝撃で二人とも軽傷を負った上に車も動かなくなってしまった。
JAFみたいな補修サービスと救急車を呼んで待っていたのだが、気がつくと完全に死んでいたはずのオオカミが忽然と消えていた。さらに何か、ただならぬ気配を感じる。車の整備工がようやくやってきて修理に取りかかっていたのだが、そこに満を持して「怪物」が現れ、餌食となる…!このままだと二人もやられる!キャシーとリジーの運命やいかに。
整備工〜!うしろうしろ!
【感想】
「未体験ゾーンの映画たち2017」にて。「母と娘が森で怪物に襲われる」という手垢のついたプロットながら、その怪物は二の次にして母と娘の愛憎入り混じった絆を綿密に描いた力作。非常にエモーショナルな仕上がりになっていて、単なる怪物もので終わらない良さがありました。これは良いですよ皆さん…。
森の中だけで90分見せていくのに全く退屈しなかったのは、やはり合間に挿入される母と娘のエピソード。娘主演の学校の演劇発表会を見に行くつもりだったのに「大嫌い!来ないで!」と突っぱね、母もそこで「クソガキ!クソガキ!」と連呼してしまったり、断酒中で娘に応援されているのにどうしても辞められずに酒を飲んでしまった挙句にトイレで酔いつぶれてしまった母を娘が優しく抱きしめる…など、ケンカばかりしているのに離れることの出来ない共依存の関係が生々しく描写されていきます。
この微妙な関係性が、圧倒的な力で食い殺そうとする怪物と対峙することでようやく崩れ、自分たちの素直な感情をぶつけ合うようになる…という流れが非常に美しく、感情を揺さぶられました。生きろ!生き延びてくれ!そしてそう応援せずにはいられない見事な構成でしたね。「あんただけは逃げて生きて欲しい!何故ならあんたはあたしが生きてた証だから…」という母の使い古されたセリフも絶体絶命の状況で感情移入もしまくってるのでむちゃくちゃ染みましたわ…。
怪物は暗闇でなかなか姿は見えないながらも、CGに頼ってないアナログな感じが懐かしく、しかし恐怖感とインパクトとビビらせはかなりのもの。正体とか、何故この森に…?とか、そういうのはマジで解明されないんだけど、ほんとそんな些細なことはどうでもいいんです。この二人の絆がテーマであり、怪物はそれをお膳立てしてくれる存在にすぎない使い方も、下手すればどっちも中途半端になりそうだけど、巧みな構成で飽きさせずに最後まで楽しませてくれた監督の手腕に感謝。次作に期待。これはオススメです。
【予告】