映画感想 - ヴィクトリア(2015)
★★★★☆
【あらすじ】
スペインからドイツに移住してきたヴィクトリアは朝方にクラブハウスでウェイウェイ踊っているところを、チンピラ仲間のゾンネら四人に声をかけられそのまま意気投合。売店から酒を盗んでマンションの屋上で一緒に酒盛りをして盛り上がる。話を聞くと四人は昔からの親友で、本物の悪人ではなさそうだ。
そのままヴィクトリアの働くカフェまで送ってあげるが、四人の様子がおかしい。どうやら四人のうちの一人が服役中にヤクザの世話になった借りを返すため、銀行強盗をしなければならないらしい。しかし四人でやらなければならない仕事なのに、一人が泥酔して使い物にならなくなった。ゾンネは「君は何もしなくていい、そこにいるだけでいい」という条件で、ヴィクトリアを半ば強制的に仲間に引き入れる。しかしただの若者に完全犯罪が出来るはずもなく、事態はあっという間に急変していく…。
【感想】
ベルリン映画祭で三冠をゲットし、色々と騒がせたドイツ映画。何がすごいかって、2時間20分ワンカット。脚本12ページ。セリフはほぼアドリブというとんでもない豪胆すぎる手法。
ワンカットに見える手法だと「ある優しき殺人者の記録」とか「サイレントハウス」、古くはヒッチコックの「ロープ」などがありますね。これらは上手くつなぎ合わせてワンカットに見えるように編集しているのとどれもワンシチュエーションものだけど、これはマジのワンカットで、クラブハウス、マンション、カフェ、車内、地下室、ホテルと次から次へと場面転換していくんですよ。これ、本当にとんでもないすごさでしょ。実際に思いついてもとてもやろうとは思わないな〜。
ベルリンの街を深夜から朝方にかけて走り抜けて行くから、様々な不確定要素もそのまま映画に使われているのも良い。序盤にマジの一般人に話しかけられて絡まれるシーンでは四人の役者がうまいこと役になりきりながら追い払ったり、自転車の二人乗りをしているときに「二人乗りするな!」と通行人に怒られたり。あとヴィクトリアの働くカフェに入ったゾンネが「立派なホテルだ…あ、いや、カフェだ(タハハ…)」というマジのセリフ間違い→はにかむ笑顔も全部そのまま使っちゃってるんですよね。
さらにImdbに書いてあるトリビアによると銀行強盗をしたあとに車で逃げるシーンで、ヴィクトリア役のライア・コスタがマジで道を間違えて「このままじゃNGになる〜!」と車内が大パニックになって後ろに隠れて乗っていた監督もマジで叫んだんだと。そういうランダム要素が逆にリアルで緊張感スーパーMAXな空気を作り出していて、素晴らしかったな〜。
正直ヴィクトリアの軽さとか、チンピラの無計画さに突っ込みどころはあったり、さすがにワンカットなので歩いて移動するシーンとかめちゃめちゃ長くてダルい箇所はとことんダルいんだけど、それを上回るほどのエネルギッシュで疾走感に溢れる奇跡の力作だな〜と思いました。一見の価値あり。
【予告】
【ワンカット関連】