映画感想 - MUD(2012)
★★★★★★
【あらすじ】
思春期まっただ中の少年エリスは、友達のネックボーンと一緒に無人島に降り立った。洪水が原因でボートが木の上に引っかかっており、「ここ俺たちの秘密基地にできんじゃね?」という期待があったからだ。しかしボートにはすでにマッドという先客がいた。詳しく話を聞くと、どうやら彼は愛する女性のために人殺しをしてしまい、警察や殺された奴の兄が雇った賞金稼ぎに狙われて現在逃亡中なのだという。マッドの一途な気持ちに共感したエリスは、ネックボーンとともに逃亡できるように手助けをしてあげるが、やはり一筋縄ではいかなかった…な話
【感想】
人類滅亡の強迫観念にかられた男が脇目もふらずに地下シェルターを作りまくる映画「テイク・シェルター」で監督をつとめたジェフ・ニコルズのヒューマンドラマ。これ、爆裂に良かった。あまりにも良すぎたわ…。エリス少年の視点で謎の男マッドとの交流を通して心の成長を描いていくんだけど、思春期にありがちな繊細な心の動きがとても爽やかに描写されておって、じぃん…としました。ほんと素晴らしい。
エリスは両親が離婚の危機にあって顔を合わせれば喧嘩もするし親父も「女はクソ」とか息子に向かって言っちゃうし、ネックボーンも両親がいなくて叔父に預けられていたりと、家庭環境が複雑。で、「愛って何やねん…真実の愛ってこの世にないん…?愛をください…wow wow…」みたいな気持ちがふつふつと湧き上がって悶々としてるところに、薄汚くてお世辞にもスマートとは言えない謎の男がめっちゃ純粋で一途な愛を語るんですよね。愛する女のために人まで殺してしまうマッドの方がカッコ良く見えてくるでしょうよ!そっちに肩持つでしょうよ!思春期なんだから!
で、盗みまで働いてマッドのために尽くしてあげるんだけど、周りの大人たちはことごとく不条理で子どもを平然と裏切るし、さらに気になってた同世代の女の子にまであっけなくフラれてしまう…ひしひしとエリスの心を支配する「現実つらすぎワロタ感」がもう圧巻。泣きながら感情が爆発させるエリスの演技は迫真であった。
そこから終盤に起こる一騒動も「必然の流れではあるけども〜!」と思いながら緊張感に溢れてひと盛り上がりある上に、最後も何だかんだできれいにあるべき所に収まる感じも大変よかった。この数日でのエリスの心の成長はとんでもないものでしょう…ひと夏の思い出ですわな…。
エリスを演じたのは最近「ゾンビーワールドへようこそ」に出てたタイ・シェリダン。ゾンビーワールドよりちょっと若いけどメインを張る子役としていい仕事しすぎていたな。対して謎のおじさんマッドは、「インターステラー」などのマシュー・マコノヒー。人間くさいがどこか憎めないマッドがハマり過ぎてて最高!
そしてエリスの家の向かいにすむトムおじさんと、ネックボーンの叔父の職業「潜水夫」が終盤に密接に関わってくるという分かりやすい映画的展開も非常に良かったわ。全体のストーリーとテーマ、そして脇役をシッカリ活かす監督の手腕が素晴らしかったので、そういうのをふまえてもう一回「テイク・シェルター」見ようかな…。
とにかく今さらではあるんだけど、MUDめっちゃオススメです。ぜひ見ましょう。NETFLIXで見ると、字幕で何回か「行けない」が「行かれない」と書かれていてめっちゃ気になるけどそれを差し引いても最高です。
【予告】