映画感想 - サクラメント 死の楽園(2015)
★★★★☆
【あらすじ】
尖りまくった突撃取材をすることでお馴染みのVICE社に勤めるサムのもとに、パトリックという青年から奇妙な手紙を受け取った。それは音信不通になった妹からの手紙で「とある共同体で暮らしているから安心しちくり〜」というものだった。何か気になるので「エデン教区」と呼ばれる共同体へカメラマンのジェイクとともに潜入取材を敢行。
エデン教区を訪れるとあっさり妹と再会したが、なんでもこの場所は<お父様>と呼ばれるおじさんが作った共同体で、幸せな生活ができているのも全てその<お父様>のおかげらしい。夜に集会所にあらわれた<お父様>、姿を現しただけで皆からワーワーキャーキャー言われて拍手に包まれておった。
せっかくなので切り込み隊長のようにインタビューを試みても的を得ない回答。住民も<お父様>の言葉一つ一つに頷き、歓声を上げる。異常だ…と思いつつもインタビューは終了し、パーティーが始まるが、ここで過ごせば過ごすほど不穏で異常な雰囲気に寒気が走ってくる…。そんな不安が頂点に達したところで、無口な女の子から「助けて」という手紙を受け取った。
もうお分かりかと思いますが、このエデンの教区は<お父様>による住民たちへのマインドコントロール&超絶独裁が行われていて、一度入ったら出ることが出来ない恐ろしい共同体なのであった。そして<お父様>は、よそ者が訪れて住民を不安にさせて共同体の秩序を乱した!楽園を維持するためには「もう一つ上のステージ・本当の楽園」に行かなければならない…!と、洗脳された住民を集団自殺させることを決意する…!サム、ジェイク、パトリック、そして妹の運命やいかに。
【感想】
「グリーン・インフェルノ」が最近公開されたイーライ・ロスが製作して、「V/H/Sシンドローム」でPOVホラー短編を担当したタイ・ウェストが監督した、実際にあったカルト教団の集団自殺をモチーフにしたPOVホラー。なかなか盤石の布陣で「何かが狂ってる異常な雰囲気」をジワジワと醸し出す演出がよかったですね〜。
このおじさんが<お父様>。この人のゆっくりとした優しい語り口と威圧感で人々を洗脳しまくってるんだな〜というさりげない怖さもよかったし、「この方の言ってることは全て正しい」と一つも疑うことなく信じきってる狂信者も怖い。本当に何言ってるか分からないし話も全く通じないし、集団自殺にをやる理由も極論過ぎるしいきなり実行されるのに熱心な信者はもう心酔しきってるからすぐに受け入れて真っ赤に染まった毒の飲み物を飲んで死んじゃうという異常すぎる状況。さらに本当は逃げ出したい人々も強制的に毒を飲まされたり銃で撃たれたりしてなす術なく死んでいく…しかも人里離れた場所にあるから簡単には逃げられない…という状況に放り込まれたとしたら、マジで地獄じゃないですか?派手な残酷描写が抑えられているぶん、余計に怖く感じましたわ。
この共同体の中に充満する「真意の見えなさ」「理由の分からなさ」っていうのが逆に恐怖を掻き立てるツールとしてむちゃくちゃ機能してるのがすごい良かったですね。本来だったら「もっと理由を明確にしろ!」とか思ったりもするんだけど。
毒を配ってます
シーン
「毒を飲んで集団自殺」っていう事件をちょっと調べると出てくるのが人民寺院というカルト教団の集団自殺だそうで。この映画で行われたことがマジで起こってたので、「事実は小説よりも奇なり〜〜〜〜!」てなりますよね…。お〜こわ。常識の通じない恐怖を体験したい方はぜひともご鑑賞ください。
ちなみにカルト教団ものといえば、教団から逃げてきたけどまともな生活ができなくなった女の子を描いた「マーサ、あるいはマーシー・メイ」や、インドネシアの教団に取材を申し込んだら地獄に放り込まれてしまう「V/H/S ネクストレベル」の1エピソード「Safe Heaven」などがありますね。あわせてどうぞ。
【ほとんど見せてる予告】